株式会社村田製作所
<新製品ニュース>

村田製作所 ストレッチャブル基板

株式会社村田製作所

この記事は、村田製作所が新たに開発した「ストレッチャブル基板」について説明しています。この基板は、柔軟性と伸縮性を兼ね備えており、ウェアラブルデバイスや医療機器などの用途に適しています。特に、基板の伸縮性により、装着者の動きに追従しやすく、快適な装着感を提供します。また、耐久性も高く、長期間の使用に耐える設計となっています。村田製作所は、この技術を活用して、さらなる応用分野の拡大を目指しています。(ミタチ産業要約)


2024/10/30

株式会社村田製作所
代表取締役社長 中島 規巨

伸縮性と信頼性を両立する「ストレッチャブル基板」を開発~高精度な生体情報収集に貢献~


主な特長

  • 伸縮性:薄く柔らかい伸縮性に優れた素材で被験者の不快感や肌への負担を低減
  • 信頼性:高い絶縁性と信頼性を実現
  • カスタム性:要求仕様に応じて様々な項目のセンシングが可能

株式会社村田製作所(以下「当社」)は、曲げ伸ばししても高い信頼性を保ちながら回路が動作する「ストレッチャブル基板」(以下「当製品」)を開発しました。体表に貼り付けて生体情報を収集する医療・ヘルスケア用ウェアラブル機器などへの活用を想定しており、不快感を抑えた良好な装着感と、高精度なデータ収集の両立を実現します。当社では要求仕様に基づいたカスタム設計、試作・検証、量産を行います。

近年医療分野では、より正確な診断を下すため、病院内で実施する高度な検査だけではなく、日常生活の中で継続的に収集する生体情報の重要性が高まってきています。生活習慣病や社会的ストレスに起因する疾病を防ぐ観点からも、日々の生体情報の管理は重要です。しかし、従来の生体モニタリングでは、身体を動かす際に起こりうるセンサの剥がれや、乳児や高齢者の繊細な肌へのダメージなどの懸念があります。また体動や外乱ノイズによる測定データの乱れも課題となっています。伸縮性基材として知られているTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)においては、高湿度環境下で使用する際には絶縁性の低下やイオンマイグレーション※1の発生が危惧されます。

そこで当社は素材、設計、プロセス技術を最適化することにより、曲げ伸ばししても電極や配線の導電性を失うことのない当製品を開発しました。柔らかく伸びる基板であるため、可動部に装着しても身体の動きに追従して密着状態を維持し、肌への負担を低減できます。また、オペアンプを電極の近傍に置くことや、シールドレイヤーを多層構造で形成することで、曲げ伸ばしに伴って生じるノイズや外乱ノイズの混入による信号の乱れを抑制できます。加えて、高湿度下でも高い絶縁性が担保された基材を用いることで、TPU基板使用時に生じる配線間の絶縁性低下への対策を講じています。このため、機能性と安全性を維持しながら回路を動作させることが可能です。

当社は当製品を通じて、心電・脳波といった生体情報のモニタリング、ウェアラブル型の治療機器への活用など、医療・ヘルスケア分野での課題解決に貢献します。


主な特長

  • 伸縮性
    薄く柔らかい伸縮性に優れた素材を採用しているため、長時間使用する際も被験者の不快感や肌への負担を低減します。また、ディスポーザブル電極の「ANSI/AAMI EC12」※2に沿った試験を当社で実施し、これに合格した伸縮性の生体電極を採用しています。伸ばしても、曲げても断線しにくく安全に使用することが可能です。
  • 信頼性
    高湿度環境下で電圧を印加することで生じるイオンマイグレーションの発生を抑制した独自の基板設計により、高い絶縁性と信頼性を実現します。また、生物学的な安全性の観点から「ISO10993」※3に沿った細胞毒性試験を当社で実施し、合格した伸縮性の基板を採用しています。
  • カスタム性
    要求仕様に応じて、フィルタやアンプ、各種センサを一つのシートに搭載することができるため、精度の高いデータの取得や様々な項目のセンシングを可能にします。FPC(フレキシブル基板)やPCB(プリント基板)などの異種基板との接合も可能です。また、電磁ノイズを抑制するシールド層を信号配線上に積層することで、正確な信号の測定に貢献します。


主な仕様

技術名 「ストレッチャブル基板」
基板の大きさ 最大290mm✕230mm
基板の厚さ 100μm前後(1層の場合)
基板部の素材 伸縮可能で安全性の高い独自基板素材
配線部の素材 銀インク
電極部の素材 銀・塩化銀インク(ANSI/AAMI EC12の試験合格(※))
※当社内で試験を実施
伸長率 60%(伸縮回数や配線抵抗値による)
金属配線の抵抗値 パターンの形状、伸縮量の繰り返し回数によって変化
※伸縮を繰り返すことによる抵抗値変化を予測する独自のシミュレータによる解析結果をもとに配線パターンを設計
部品実装の可否 可能
基板の層数 1~3層
基板間接合の可否 可能

注釈

  • ※1イオンマイグレーション:高い湿度環境下での一定電圧の印加によって、樹脂素材上に形成した金属配線パターン配線などに短絡を引き起こす現象。
  • ※2ANSI/AAMI EC12:心電図などの検査の際に使用するディスポーザブル電極に求められる仕様を規定した米国規格協会(ANSI)と米国医療機器振興協会(AAMI)が定めた規格。
  • ※3ISO 10993:皮膚の遅延型アレルギー反応への感作性や刺激性など、体細胞毒性に関する高い生体適合性を実現した製品を開発・製造するためのプロセスを評価する国際規格。出来上がった製品そのものの安全性ではなく、再現性の高い高度な安全性を作り込むための仕組みと取り組みが評価対象となる。


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ムラタについて

村田製作所はセラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行っている世界的な総合電子部品メーカーです。独自に開発、蓄積している材料開発、プロセス開発、商品設計、生産技術、それらをサポートするソフトウェアや分析・評価などの技術基盤で独創的な製品を創出し、エレクトロニクス社会の発展に貢献していきます。


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