エス・オー・シー株式会社
<お役立ち情報>
EV用ヒューズおよび選定ガイド
エス・オー・シー株式会社
世界初の量産型電気自動車用ヒューズから続く、エス・オー・シーの小型・高性能なEV用ヒューズ。
EVのバッテリー・高電圧回路・車載充電器・補機などの保護に豊富な実績があります。
ヒューズ選定・マッチング試験、新製品・カスタム品などのご相談は、経験豊富な当社の技術者がお手伝い致します。Webに掲載していない製品もございますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
EV用ヒューズ選定ガイド
このガイドは、電動車(BEV・HEV・PHEV・FCV)の各アプリケーションに適切なヒューズを選定するための要点をご紹介するものです。なお、ヒューズに関する技術相談、不明な点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
EV用ヒューズに求められるものとは?
ヒューズは、発煙、発火、損傷等を引き起こす危険のある短絡電流或いは異常電流から電気回路を保護する重要な安全部品です。EVにおけるヒューズの使用環境は、家電製品と異なり、大きな温度差や激しい振動等が加わる過酷な状態におかれます。EV用ヒューズは、その過酷な環境に長期間耐える高い信頼性と、回路の高電圧に対し安全な電流遮断ができる性能を必要とします。
どの回路でどのようなヒューズが必要か?
EV内には様々な回路が存在し、そのニーズに応じて異なるタイプのヒューズが必要となります。
補機回路には様々なアプリケーションが想定され、各動作モードにおいて最も負荷の大きな電流条件においても不要溶断を起こすことなく、事故電流が発生した時には上流の回路に影響が及ばないように、迅速に事故電流を遮断することが求められます。
メイン回路用ヒューズ
メイン回路特有の、通常動作中においても生じる変動の大きな電流において、不要溶断を起こすことなく、一方、事故電流が流れた時には、電線やリレーの発煙・発火防止、或いは半導体故障が引き起こす破壊防止のため、迅速、かつ大電流の遮断が求められます。
車載充電器用ヒューズ
車載充電器では、電力が供給される入力側にはAC定格、充電器から出力側にはDC定格が必要となります。AC定格のヒューズは、電力供給側のブレーカーとの保護協調と、電源インピーダンスを考慮した遮断容量と、仕向け先の規格あるいは法規制の順守が求められます。DC定格のヒューズは、回路故障が発生した時には上流の回路に影響が及ばないように、迅速に事故電流を遮断することが求められます。また、車載充電器の小型化・軽量化に伴い、AC定格、DC定格とも小型化・軽量化が求められます。
DC-DCコンバーター用ヒューズ
DC-DCコンバーターでは、回路中の過電流保護機能との保護協調と、スイッチング用半導体等の故障による異常電流が他の回路部品事故に波及しないよう、迅速な電流の遮断が求められます。また、回路基板の高密度化から、小型である事も重要なポイントとなります。
補機回路用ヒューズ
補機回路には様々なアプリケーションが想定され、各動作モードにおいて最も負荷の大きな電流条件においても不要溶断を起こすことなく、事故電流が発生した時には上流の回路に影響が及ばないように、迅速に事故電流を遮断することが求められます。
EV用ヒューズに求められる特性
EV用ヒューズの選定にあたっては、以下の特性を考慮する必要があります。
通常の動作において発生するラッシュ電流/過渡電流および定常電流において不要溶断を起こさず、異常電流に対し回路部品からの発煙、発火が起きない電流値をI-tカーブ/I2t-tカーブおよび温度リレーティングカーブを用いて選定します。不要溶断を引き起こさないためのマージンは、ヒューズの種類、ヒューズメーカー等で異なるため、確認が必要です。
EVのバッテリーは、電力損失や充電時間の短縮等で高電圧化が図られています。高電圧化により、ヒューズエレメントの溶断後に発生するアークが継続しやすく、ヒューズの本体の破壊などの危険性が増大します。このアークを確実に遮断できる電圧の最大値を、定格遮断電流とともに検討する必要があります。定格電圧は回路の電圧を超えるように選定します。
ヒューズのサイズは、定格電圧および電流遮断能力に相関するため、条件に合う適切なサイズのヒューズを選択する必要があります。また、大きな電流では、回路/配線との接続部において、接触抵抗により発熱を生じる危険があるため、確実な取り付けが可能なボルト締めタイプのヒューズをお勧めします。
ヒューズは周囲温度の影響を受けます。特に、EVの装置温度は一般電気機器に比べ高くなることが想定されますが、使用温度はヒューズメーカーが推奨する温度の範囲内となるよう、注意が必要です。また、使用温度を考慮して、マージンの見直し/定格電流の見直しが必要な場合があります。
ヒューズのI-tカーブは、リレーの短絡耐量を超える電流やケーブルの発煙特性等を確認し、確実に溶断する特性をもつヒューズを選定します。なお、EVの高電圧回路での溶断の場合、定格遮断電流以下でI-tカーブ上としては溶断する小さな電流において、ヒューズエレメント自体は溶断するものの、その溶断ギャップが狭いことでアーク放電が継続し遮断を失敗する危険があるため、最小遮断電流についても注意が必要です。
定格電流
通常の動作において発生するラッシュ電流/過渡電流および定常電流において不要溶断を起こさず、異常電流に対し回路部品からの発煙、発火が起きない電流値をI-tカーブ/I2t-tカーブおよび温度リレーティングカーブを用いて選定します。不要溶断を引き起こさないためのマージンは、ヒューズの種類、ヒューズメーカー等で異なるため、確認が必要です。
定格電圧
EVのバッテリーは、電力損失や充電時間の短縮等で高電圧化が図られています。高電圧化により、ヒューズエレメントの溶断後に発生するアークが継続しやすく、ヒューズの本体の破壊などの危険性が増大します。このアークを確実に遮断できる電圧の最大値を、定格遮断電流とともに検討する必要があります。定格電圧は回路の電圧を超えるように選定します。
定格遮断電流
EVに搭載されるバッテリーの出力電流は、その高出力化とともに増大し、事故が発生した際の短絡電流も増大します。定格遮断電流は、ヒューズ本体が破壊せず電流を安全に遮断できる電流の最大値です。該当する法規制や回路インピーダンスを踏まえ、ヒューズの定格遮断電流は、想定される短絡電流を超えるように選定します。
サイズと形状
ヒューズのサイズは、定格電圧および電流遮断能力に相関するため、条件に合う適切なサイズのヒューズを選択する必要があります。また、大きな電流では、回路/配線との接続部において、接触抵抗により発熱を生じる危険があるため、確実な取り付けが可能なボルト締めタイプのヒューズをお勧めします。
使用温度
ヒューズは周囲温度の影響を受けます。特に、EVの装置温度は一般電気機器に比べ高くなることが想定されますが、使用温度はヒューズメーカーが推奨する温度の範囲内となるよう、注意が必要です。また、使用温度を考慮して、マージンの見直し/定格電流の見直しが必要な場合があります。
溶断時間-電流特性(I-tカーブ)
ヒューズのI-tカーブは、リレーの短絡耐量を超える電流やケーブルの発煙特性等を確認し、確実に溶断する特性をもつヒューズを選定します。なお、EVの高電圧回路での溶断の場合、定格遮断電流以下でI-tカーブ上としては溶断する小さな電流において、ヒューズエレメント自体は溶断するものの、その溶断ギャップが狭いことでアーク放電が継続し遮断を失敗する危険があるため、最小遮断電流についても注意が必要です。
電流波形に基づくヒューズの選定
電源投入時の突入電流と通常モードの定常電流から構成される電流波形では、従来から公開されているI2t-tおよびI-tカーブでの選定が可能です。一方、EVメイン回路の電流波形は激しく変化し複雑なため、従来から公開されているI2t-t評価では、正しく評価できない場合ががあります。これらの評価は複雑で手間の掛る作業を要します。弊社はお客様のアプリケーションに最適なヒューズの選定のお手伝いをさせて頂きます。お気軽にお問い合わせください。
EV用リレーとのマッチング
EVの高電圧回路の開閉のためにEV用リレーが使用されますが、その接点の焼損/焼き付きに伴う二次被害を防止するためには、ヒューズとの保護協調等のマッチング評価が不可欠です。 SOCは、EV用リレーとのマッチング試験のご相談に対応しています。お気軽にお問合せ下さい。 (ご参考: ヒューズ関連試験のご案内).
AEC-Q200 適合ヒューズ
AEC(Automotive Electronics Council:車載電子部品評議会)は、 米国の3大自動車メーカーを中心として大手電子部品メーカーが参加して1990年代に設立された団体で、厳しい環境にさらされる車載部品について共通の品質規格を開発し、導入してきています。もともと、ヒューズはAEC規格の対象外でしたが、2023年に受動部品向けAEC-Q200の信頼性試験の対象が拡大され、 改訂E版(Revision E)では、ヒューズも対象となりました。この動きに対応し、エス・オー・シーは、一連の車載用ヒューズについてAEC規格に則った試験を実施しています。試験内容はヒューズの種類によって異なりますが、例えば基板実装型ヒューズである500VBI1030については以下のような試験内容となります。
No. | 試験内容 | 備考 |
---|---|---|
1 | ストレス試験前後での電気的特性検査 | 各ストレス試験前後にヒューズの抵抗値を測定。 各ストレス試験後に溶断試験および通電容量試験を実施 |
2 | 高温試験 | 125℃ 1000h |
3 | 温度急変試験 | -40℃⇔125℃ 1000サイクル |
4 | 高温高湿負荷試験 | 85℃ 85% 1000h、定格電流の10%の電流を通電 |
5 | 高温負荷寿命試験 | 125℃ 1000h、ディレーティングを考慮した電流を通電 |
6 | 外観検査 | 拡大鏡等によってヒューズの外観を拡大し、目視によって検査する |
7 | 寸法検査 | ヒューズの外形寸法を測定する |
8 | 耐溶剤性試験 | 規定の溶剤への浸漬とブラッシング |
9 | 衝撃試験 | 正弦半波100G/6ms |
10 | 振動試験 | 加速度5G、周波数10-2000Hz、掃引速度20min/1サイクル、合計12サイクル |
11 | はんだ耐熱性試験 | ヒューズを溶融はんだ槽に浸漬させる(はんだ温度260±5℃、10±1s維持) |
12 | はんだ付け性試験 | ヒューズの端子を溶融はんだに浸せきさせた後,はんだのぬれ性を検査する |
13 | 電気的特性試験 | 温度上昇 ≦ 150K@1.0IN 通電容量1.0IN 溶断時間 ≦ 120s@2.0IN 定格遮断試験 DC500V2,000A@抵抗回路 |
14 | 耐プリント板曲げ性試験 | 試験基板にヒューズを実装し、基板に曲げ力を加える (曲げ深さ2mm、60s維持) |
高温試験
耐プリント板曲げ性試験
SOCのEV用ヒューズ
SOCは、各種電動車(BEV・HEV・PHEV・FCV)の回路に対応するEV用ヒューズを取り揃えています。 例えば、メイン回路用に開発されたPTシリーズは、高い電圧定格、大電流定格および優れた速断性、高い耐久性と、EVの回路保護にふさわしい特徴を備えています。その他Webに掲載していない製品もございますので、ぜひお気軽にお問合せください。
おわりに
EVの各アプリケーションに適したヒューズの選定は、システムの安全性と信頼性を確保する上で重要です。このガイドでは、ヒューズを選定する際の要点を紹介しましたが、お客様の具体的な個別案件に対する検討については、弊社に相談されることを強くお勧めします。弊社では、経験豊富なエンジニアチームが、お客様の回路に最適なヒューズを選定するためのプロセスをご案内いたしますので、ぜひお電話またはメールにてお問い合わせください。弊社では、営業担当による対応に加え、ヒューズ説明会等も企画・ご提案しております。