2024年12月18日
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)の進展に伴い需要が増大する高速車載通信システム向けに、CAN FD(CAN with Flexible Data rate)*1対応の双方向TVS(ESD保護)ダイオード*2「ESDCANxxシリーズ」を開発しました。CAN FDは、車内のECU(電子制御ユニット)間でリアルタイムかつ安全なデータの送受信に不可欠な通信技術です。新製品は、CAN FDなどの高速通信において伝達信号を劣化させることなく、サージや静電気放電(ESD)からECUなどの電子機器を保護することで、高品質な車載通信を実現します。
「ESDCANxxシリーズ」はSOT-23(2.9mm×2.4mm)とDFN1010(1.0mm×1.0mm)の2種類のパッケージで、それぞれ24Vおよび27Vのスタンドオフ電圧(VRWM)に対応しています。SOT-23パッケージは、24V対応の「ESDCAN24HPY」「ESDCAN24HXY」と27V対応の「ESDCAN27HPY」「ESDCAN27HXY」の4機種。DFN1010パッケージでは、24V対応の「ESDCAN24YPA」「ESDCAN24YXA」と27V対応の「ESDCAN27YPA」「ESDCAN27YXA」の4機種で、計8製品をラインアップしています。
新製品は素子構造の最適化により端子間容量*3を最大3.5pFまで低減し、高速通信時における信号劣化を防止。高い耐サージ特性も実現しており、車載環境における電子機器の保護性能を大幅に向上しています。例えばDFN1010パッケージで提供する27V対応品では、CAN FD対応の相当一般品と比較してサージ耐量*4が約3.2倍に向上し、クランプ電圧*5も約16%低減されています。これにより、車載ECUなどの高価でサージに敏感な電子機器を効果的に保護し、過酷な車載環境でも高い信頼性を提供します。
新製品は、2024年11月より月産50万個の体制で順次量産を開始しています。生産は前工程をローム・アポロ株式会社(福岡県)、後工程がROHM Korea Corporation(韓国)などが担当しています。。ロームは今後も、車載通信のさらなる高速化に対応する製品を開発し、自動運転や車載通信環境を支え、より安全で先進的なモビリティ社会の実現に貢献していきます。
<背景>
自動運転技術やADASの急速な発展に伴い、車載通信のさらなる高速化と信頼性向上が求められています。特に自動運転では、カメラ、LiDAR、レーダーなどのセンサから得られる膨大な情報を迅速かつ正確に処理する必要があるため、従来の車載通信で使用されていたCANに代わり、より高速で大容量のデータ転送が可能なCAN FDの採用が進んでいます。
一方で車載通信の高速化には、過酷な環境下でも安定した通信を実現することが不可欠であり、低い端子間容量でありながらサージ耐量やクランプ電圧などの性能に優れた保護部品の需要が高まっています。これに伴い、車載通信向けのTVSダイオード市場も今後さらなる成長が期待されています。
これらの市場ニーズに対応する製品として、ロームは低い端子間容量と優れたサージ耐量を両立させた新製品「ESDCANxx」を開発しました。
<製品ラインアップ>
品番 | データ シート |
絶対最大定格(Ta=25℃) | 特性(Ta=25℃) | 極性 | 車載 準拠 AEC- Q101 |
パッケージ [mm] |
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ピークパルス 電力 (tp=8/20μs) PPP Max. [W] |
ピークパルス 電流 [サージ耐量] (tp=8/20μs) IPP Max. [A] |
ESD 耐量 (C=150pF, R=330Ω) VESD Max. [kV] |
接合部 温度 Tj Max. [℃] |
スタンド オフ 電圧 VRWM Max. [V] |
ブレークダウン 電圧 (IR=1mA) VBR [V] |
クランプ 電圧 (tp=8/20μs) VCL Max. [V] |
端子間 容量 (VR=0V) Ct Max. [pF] |
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Min. | Max. | IPP=3A | IPP=1A | |||||||||||
ESDCAN24HPY | 180 | 4.3 | 30 | 150 | 24 | 25.5 | 30 | 43.5 | 35.5 | 3.5 | 双方向 | ✓ | SOT-23 (2.9 × 2.4 × 0.95) |
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ESDCAN24HXY | 175 | ✓ | ||||||||||||
ESDCAN27HPY | 4.0 | 150 | 27 | 28 | 32.5 | 47.5 | 38.5 | ✓ | ||||||
ESDCAN27HXY | 175 | ✓ | ||||||||||||
ESDCAN24YPA | 220 | 6.0 | 15 | 150 | 24 | 25.5 | 30 | 38.5 | 35 | 3.5 | 双方向 | ✓ | DFN1010 (1.0 × 1.0 × 0.4) |
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ESDCAN24YXA | 175 | ✓ | ||||||||||||
ESDCAN27YPA | 230 | 5.8 | 150 | 27 | 28 | 32.5 | 41.5 | 37.5 | ✓ | |||||
ESDCAN27YXA | 175 | ✓ |
<アプリケーション例>
・自動運転や先進運転支援システム(ADAS)
・車載電動パワートレインシステム
・車載インフォテインメントシステム など
<用語説明>
- *1)CAN FD(CAN with Flexible Data rate)
- CAN(Controller Area Network)の拡張規格であり、従来のCANに比べてデータの転送速度が高速化され、大容量データのやり取りが可能。自動運転やADASといったシステムにおいて、複数の車載電子制御ユニット(ECU)間のリアルタイム通信に必要とされる。
- *2)TVSダイオード(Transient Voltage Suppressor Diode)
- 過電圧やサージ、静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)から回路を保護するための半導体素子。TVSダイオードは、突発的な電圧や電流のスパイク(サージ)を吸収し、回路の破損や誤動作を防ぐ。車載環境では、過酷な電気的変動に対する保護が重要となる。
- *3)端子間容量(Capacitance Between Terminals)
- 電子部品において発生する不要な容量成分。端子間容量が大きいと高速通信時に信号が劣化するため、車載通信では端子間容量を低減することが重要となる。
- *4)サージ耐量(Surge Current Rating)
- TVSダイオードが耐えられる最大のサージ電流値。サージ耐量が高いほど、車載環境の過酷な電気的変動に対して強い保護性能を発揮する。
- *5)クランプ電圧(Clamping Voltage)
- TVSダイオードがサージなどによる過電圧を抑制する際に、回路内で維持される電圧。この電圧が低いほど、回路や機器をより効果的に保護でき、車載機器の信頼性を高める。
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